高級なサービスと温かいサービスとは異なる
高級なサービスと温かいサービスとは異なる
コーヒー屋さん、クルマ屋さん、ラーメン屋さん、ホテル、病院。
薬局、マッサージ屋さん、児童デイサービス、介護デイサービス。
この街に住んでいるとよく目にする場所があります。
昔からずっと長くあるお店もあれば、最近になってたくさん目にするようになったものもあります。
保育園、有料老人ホーム、高層マンション。
当院も人のことは言えませんが、この街でこの10年間で大きく増えた気がします。
高齢者施設や託児施設は、施設によっていろいろと特色があります。
特に近隣の、創成東地域はいろいろとあって興味深いです。
認可園では、
昔からある保育園、夜も開いている保育園、幼稚園顔負けの教育メソッドを持つ保育園、
カトリック教会の保育園、新築でピカピカの保育園、プールと英会話がくっついた保育園。
認可外の企業主導型や事業所内保育でも、
百貨店の中にある保育園、うちのようなクリニックにある保育園、札幌駅直結の駅チカな保育園。
と、ホントにまあ、いろいろあります。
有料老人ホームも施設によって特色があります。
なんとかガーデンとか、なんとかコートとか、なんとかヴェラスとか、高級感漂うお城のようなホーム。
みのりとか、こもれびとか、きらめきとか、なんとなくやわらかい響きで温かそうな名前のホーム。
マンションも色々とあります。
大体は高級感を前面に打ち出しているのですが、
駅前にそびえたつコンシェルジュさんがいる立派なタワーマンション、
豊平川の見える場所にバルコニーがある花火がきれいに見えるマンション、
いま流行りの民泊が主体のAirB&Bなマンション、
築30年だけれども管理会社がしっかりしているライオンズマンション。
今は選択肢が多すぎて、選ぶだけでも悩んでしまいます。
間違っていたら申し訳ないのですが聞いたところでは、
フランスの観光協会はハードウェアだけを星の数の基準としているそうです。
部屋の広さが9平米以上あると一つ星、エレベーターが備えられて部屋が24平米以上で
24時間コンシェルジュがいると五つ星、みたいなものだそうです。
ハードウェアや値段そのものが高ければ、それだけで高級なサービスになります。
認可保育園や企業主導型保育事業の基準も似たようなものです。
0歳児ひとり当たりほふく室が3.3平米以上で保育士が1/3人以上、
保育計画が月と週とに分けられて、近くに公園があって、避難経路がふたつ確保されていて、
消防法の用途区分の6項ハの基準を満たし、会社は子ども子育て拠出金を支払っていて・・・
ズラッと並んだ項目を全て満たして自治体の認可や国からの助成金支給を受けられます。
内容はハードウェアだけを求められおり、本質的な違いはありません。
本当は大切なのだけれども外から見えない、
どの時代でもひと目では分からないものは、人です。
判断するのは人間ですから、人の質を定量化して評価することはできません。
スタッフがいつも笑顔だとか、休憩室でも子供のことを考えてくれているとか、
いつも感謝の気持ちに満たされているとか、職場の風通しが良いとか、
そういう本質的なものを平等に評価することはできませんし、発信することも難しくなります。
経営者でさえも自分の事業所がどうなのか、把握できていないかもしれません。
保育の質や介護の質と表現することがままありますが、
その質が「暖かい」ものなのか「高級な」ものなのか曖昧になることは多々あります。
子供の成長発育にとって大切なことは、保育の質ではなく保育環境にあります。
保育の質が高級でも、保育環境が整っていなければ発育に悪影響を及ぼしますし、
逆に保育の質が高級でなくても、それが温かいものであれば自由活発に成長します。
高級かつラグジュアリーで充実した保育環境ならば言うことなしなのですが、
これからの時代に求められるサービスは高級かどうかに関わらず、
「温かい」サービスを提供し、それを外部に発信していくことだと思います。
なぜならば社会が充実しているので、サービスを受ける側の目も豊かになり、
うわべの高級感だけでは消費者に見透かされてしまうからです。
インターネット技術の発展による利便性の追求もひと段落した印象があります。
これからは見えない情報をどう外に示していくか、
そのためには必須な定量化できないサービス資源を備えていくこと、
それを追及していってみようと思っています。