ずっと追いかけている背中

今週末の札幌はよさこいソーラン祭りです。それで思い出したのですが、
クリニック開業初年の大晦日の夜、あるグループホームに往診したことがありました。
そこでは「きよしのソーラン節YOSAKOIソーラン紅白スペシャル!」が流れていました。

訪問診療をしていると患者さんのご自宅でテレビが映っていることが多く、
病院で働いている時よりはテレビ番組について良く知るようになったのですが、
最初の頃は、お昼のテレビは「午後はまるまる思いっきりテレビ!」とか、
「笑っていいとも!」とか、まだまだ放映されていた時代でした。

同じくお茶の間で人気だったのだが、「氷川きよし」さんで、
患者さんのご自宅の壁にポスターが貼ってあったり、
デイサービスでずんどこ節を唄われたり、おばあちゃん方に大人気でした。

氷川きよしさんは僕と同い年なのだそうですが、
当時20代の彼はその卓越した歌唱力とはうらはらに、
とても若々しく初々しく、僕もこんな風におばあちゃん方にモテたいなあと、
目標にしている演歌歌手でした。

年月は積み重なり、12年以上が経ち、当時20代だった僕らは40代に入り、
若くてかわいらしいではやっていけない年齢になってしまいました。
今はもっともっと若くてかわいらしい演歌歌手がたくさん現れ、
お医者さんも僕より若手のドクターがたくさん訪問診療をされるようになりました。

いつも患者さんから教えて頂くのですが、
人間は一年にひとつずつ年齢を重ねていきます。
これだけは誰しもが平等で、生き物の宿命でもあり、自然の摂理でもあります。
けれども、どう歳を取っていくかは、自分自身が決められることです。

様々な経験を重ねる、それを反省して次に活かす、
いろいろな人と会う、いろいろな所へ行ってみる、
経験を活かして成長する、内省の上に自分自身を変える。
自然の摂理を変えることはできませんが、自分自身を成長させることは、幾つになってもできます。

そんな本厄を抜けた今年、氷川きよしさんは全く新しい姿に生まれ変わりました。
僕らが今までに想像もしなかった、おばあちゃん方がおったまげてしまう氷川きよしさんです。
氷川きよしさんの歌唱力は相変わらず圧倒的で、そこはブレていません。
けれども、自分の一番大切な軸を守ってさえいれば、そこから自由に羽ばたいてしまっても良い、
そんなことを氷川きよしさんに教えてもらったような気がします。

時代や環境が変化していくに連れ、組織や人間も変わっていかなければなりません。
ごう在宅クリニックも氷川きよしさんと同じように、
患者さんの人生に携わるという軸は、首尾一貫して続けて参りますが、
クリニック自体は自由自在に変わっていきます。
今年は特に、箱も人も規模も、大きく変わりつつある年です。

同い年の氷川きよしさんに追い付け追い越せ、
これからもおばあちゃん方から愛して頂けるように、
背中を追い続けていこうと思っています。