13年目。
春になり、ごう在宅クリニックが訪問診療を始めてから12年が過ぎ、13年目に入りました。
干支がひとまわりして、また12年前の開院時と同じ亥年の4月を迎えることができました。
当時に伺っていたある高齢の患者さん、月曜日の朝に伺っていたのですが、
いつも居間のテレビに大リーグ中継が映っていて、イチロー選手がヒットを打っている風景が日常でした。
12年が経つうちに、いつのまにかテレビ画面でイチロー選手の野球中継を観ることはなくなり、
その患者さんは何年も前に人生を全うされ、20代だった自分もいつのまにか40代になっていました。
誰しもがみな平等に、12歳ずつ、年を取りました。
その間にいろいろなことが、移ろい変わっていきました。
在宅医療に携わらせて頂いて、たくさんの方のご自宅と人生を拝見して、
どのように年齢を重ねていくことが幸せなのか、若いうちから考える機会を頂けました。
人生の終わりも大切ですが、その途中でも、人生ですから何度も区切りや変化、逆境があります。
人間は老いていくに従って身体は動かなくなり、環境も変わり、考え方も変わっていきますが、
いつにおいても自分らしく、好きでいて社会に貢献できることがあれば、つらいことを乗り越えられる気がします。
ある患者さんが仰った言葉で印象的だったのですが、人生の最後に後悔したのは、したいことをしなかった事だと教えて頂きました。
10代や20代の人生の登り坂では自分自身が成長するという目標のためだけに、野球少年のような夢も追い続けらますが、
40歳も過ぎ身体の下り坂に差し掛かれば、願ったようにはできないよという限界も見えてきます。
人に喜ばれる人になるとか、人のために貢献するとかいうことが、きれいごとではなく自分自身の将来の幸せを大きく左右して、
実のところはそういう徳を積み重ねてさえいれば、良い老後と最期を過ごせるのかもしれない。
人間は思い出だけでも生きていける。
結局は自分自身の問題で、人生って厳しいですし現実は残酷なこともありますが、時には優しい顔を見せてくれるもありますよね。
これからは良い年の取り方をしていきたいです。
改めて、今まで12年間、当院を支えて下さった皆様に感謝しております。
本年度も変わらずにどうぞよろしく、お願い申し上げます。